20/04/2024
近年、映像制作業界では「Camera-to-Cloud(C2C)」という新技術が注目を集めています。この技術は、撮影現場で生成された素材を直接クラウドに転送し、制作プロセスの効率化を実現する革新的なアプローチです。HCLTechは、5Gネットワークを活用したC2Cソリューションによるストリーミング配信の実演を、NABショーで披露しました。本記事では、HCLTechのケーススタディを基に、5G技術が映像制作やストリーミング配信に与える影響について掘り下げます。
Camera-to-Cloud技術の背景
C2Cソリューションは、映画制作業界の「MovieLabs 2030 ビジョン」を基盤としており、制作現場で生成されたすべてのメディア資産をクラウドに直接送信することを目標としています。
多くの制作現場ではRAWデータ(例:ARRIRAW)をカメラメディアに記録し、その後、DIT(Digital Imaging Technician)ステーションでプロキシファイル(例:ProRes LT)に変換して運用するという時間とコストがかかるプロセスが一般的です。一方、C2C技術は5G通信を活用し、これらのデータを直接クラウドに転送可能とします。これにより、制作チーム内やクライアント間でのリアルタイムなコラボレーションが可能になりました。
5G技術が可能にするストリーミング配信
Camera-to-Cloudは、特に5G通信の高速性と安定性を活かして進化しました。
例えば、RAWファイルやプロキシファイルをクラウドに転送する際、以下のような処理が可能です:
単一5Gリンク:25Mbpsのアップロード速度では、4K RAWファイル1分分を約202分で転送可能。プロキシファイルの場合は約16分で転送できます。
リンクの束ね(5本の5Gリンク):112.5Mbpsの帯域幅なら、4K RAWファイル1分分を約45分で、プロキシファイルを約3.5分で転送可能。
これにより、物理メディア(SDカードやハードディスク)の輸送が不要になり、カーボンフットプリントの削減にも寄与します。
NABショーにおける課題と解決
NABショー(ラスベガス)は放送・メディア業界最大級の展示会で、HCLTechはここで自社のC2Cソリューションを実演しました。しかし、会場近辺では通信塔が限られており、大規模な帯域幅を確保することが困難でした。この制約に対処するため、HCLTechはCalnex SolutionsのNE-ONEネットワークエミュレーターを活用しました。
NE-ONEは、異なるネットワーク条件(例:50Mbps、100Mbps、200Mbps、400Mbps)をシミュレートできるテスト環境を提供します。これにより、HCLTechはネットワーク帯域幅の制約を克服し、リアルなストリーミングデモを実施することが可能になりました。
実演の詳細
NABショーのブースでは、HCLTechがNE-ONEエミュレーターを用いて「ミニビデオ村」を再現しました。ここでは、以下のようなセットアップが行われました:
ブース設置環境: リモートチームと制作現場チームを模倣する2台のノートパソコンを5Gネットワークリンクで接続。
帯域幅ごとのシミュレーション: 50Mbpsから400Mbpsまでの異なるネットワーク条件を再現し、ユーザーエクスペリエンスの変化を来場者に体験させました。
ビジュアルデータの提示: リアルタイムのネットワーク性能データを表示することで、来場者の信頼を獲得しました。
結論と今後の可能性
HCLTechのCamera-to-Cloudソリューションは、5G技術を活用した映像制作において、ストリーミング配信の未来を示す重要な事例となりました。NABショーでの実演は、C2Cの実用性を証明すると同時に、制作効率と持続可能性の向上への貢献も強調しました。
HCLTechのC2C技術の詳細や、このケーススタディに基づくさらなる洞察に興味がある方は、以下リンクよりケーススタディHCL-Tech-Camera-To-Cloud-Case-Studyをダウンロードしてご覧ください:
ストリーミング配信と5G技術が交差する未来に向けて、この技術は特に映画制作やメディア業界において、新たな可能性をもたらすでしょう。
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