近年、スマートグリッドの普及に伴い、電力系統におけるイーサネットベースの通信が増加しています。IEC 61850は、変電所自動化のための国際規格であり、イーサネットベースの通信プロトコルを利用しています。その中でも、IEEE 1588で規定されているPrecision Time Protocol (PTP)は、IEC 61850における時刻同期の重要な要素となっています。
本記事では、IEC 61850におけるPTPの役割と利点について解説します。また、PTPを適用する上で考慮すべきポイントや、関連する製品についても紹介します。
PTPとは
PTPは、イーサネットネットワーク上で高精度な時刻同期を実現するためのプロトコルです。PTPでは、マスタークロックとスレーブクロック間で時刻情報をやり取りすることで、ネットワーク全体の時刻を同期します。
PTPの特徴は以下の通りです。
マイクロ秒オーダーの高精度な時刻同期が可能
ネットワーク遅延の影響を補正できる
冗長化構成に対応
IEC 61850におけるPTPの利点
IEC 61850では、保護リレーや監視制御装置など、多数の機器が相互に通信を行います。これらの機器間で高精度な時刻同期を実現することで、以下のようなメリットが得られます。
事故時の正確な事象解析が可能
系統全体の状態を正確に把握できる
保護リレーの協調動作が可能
特に、差動保護など、複数の機器間で高速かつ高精度な動作が求められる用途では、PTPによる時刻同期が不可欠です。
PTPを適用する上での留意点
PTPを適用する上では、以下のような点に留意が必要です。
プロファイルの選択
IEC 61850では、IEC 61850-9-3で規定されているUtility Profileを使用します。一方、IEEE C37.238-2017で規定されているPower Profileは、Utility Profileをベースに一部オプションが追加されています。適用するプロファイルを適切に選択することが重要です。
機器の性能検証
PTPを適用する上では、ネットワーク機器やスレーブ機器のPTP対応状況を確認する必要があります。特に、Boundary Clock (BC)やTransparent Clock (TC)を使用する場合は、それらの機器の性能が要求仕様を満たしているか検証が必要です。
ネットワーク構成の最適化
PTPの性能は、ネットワークの構成に大きく依存します。ネットワークの冗長化やトポロジの最適化など、ネットワーク設計の段階からPTPを考慮に入れる必要があります。
関連製品の紹介
PTPを適用する上で有用な製品を紹介します。
Calnex Paragon-X: PTPとSyncEのテストベッドとして利用可能。プロトコルとタイミングのテストが可能。
Calnex SNE: マルチポート、マルチユーザーに対応したネットワークエミュレータ。複雑なネットワークの再現が可能。
Calnex PFV: PTPメッセージの解析とレポート生成が可能なフィールド検証ツール。
PTPの詳細については、Calnex Solutions社の技術資料『Precision Time Protocol (PTP):IEC 61850環境での同期』が参考になります。ぜひダウンロードしてご覧ください。
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